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技術コラム

治具を使わず曲面形状の製品をラミネートできる お客様の声から生まれた【加圧式曲面ラミネータ装置】

2023-05-11
加圧式曲面ラミネータ装置
加圧式曲面ラミネータ装置
加圧式曲面ラミネータ装置
大気圧で加圧する、北川精機のラミネータ装置
北川精機は、製品を加圧・加熱成形する「熱成形プレス装置」を主力製品としていますが、これとは全く異なる原理で加圧・加熱成形を行う「ラミネータ装置」も製造しています。

当社の「熱成形プレス装置」は、シート状の成形品を2枚の熱板(平板状の温調金型)で挟み、油圧シリンダや電動ボールねじなどで片方の熱板を駆動させて加圧・加熱成形する機構のものが大半ですが、これに対し「ラミネータ装置」は、熱板の上に置かれた成形品をダイヤフラムシート(耐熱ゴムシート)で覆い、その上から空気(大気)の圧力で加圧する装置です。

「ラミネータ装置」では、成形品がセットされている空間を減圧する(真空にする)ことで、大気圧のおよそ0.1MPaがダイヤフラムシートを介して製品上にかかります。大気圧を利用するため油圧などの加圧機構を必要とせず、また加圧力を受け止めるフレーム構造も必要としないため非常にシンプルな構造の装置にでき、成形品のサイズを問わず全面を0.1MPaで均等に加圧することができるという大きな利点があります。

さらに柔らかい素材のダイヤフラムシートで加圧するためガラスなどの割れやすい製品の貼り合わせに適しており、凹凸がある製品に対しても、ダイヤフラムシートが凹凸に沿って均一に加圧することができます。これらの特徴から太陽電池(ソーラーパネル)や、タッチパネルなどの貼り合わせ(ラミネート)成形に広く使用されています。
加圧式ラミネータ装置はプリント基板のラミネート工程などで活躍
上記の大気圧で加圧する「ラミネータ装置」は、簡素な機構すなわち安価な装置で大きな製品のラミネートができることが優れた点ですが、最大の加圧力は大気圧の0.1MPaに制限されます。そのため、凹凸の大きな素材や微細な凹凸への樹脂の流動が必要な場合、FRP強度部材の成形などでは成形圧力が不十分な場合があります。

これを解決するためにダイヤフラムシートの上部をチャンバー構造として、ここに圧縮空気などを導入して成形品に大気圧以上の圧力がかかるように工夫したものが「加圧式ラミネータ装置」です。高い成形圧力が得られることから、微細な凹凸の埋め込みが必要なプリント基板・薄膜基板・フレキシブル基板・ICカードといった製品のラミネート工程などに用いられています。
お客様のご要望をもとに開発した、加圧式曲面ラミネータ装置
一般的に「ラミネータ装置」は、太陽光パネルなどの平坦な製品のラミネートに用いられていますが、熱板上に曲面の金型などの治具を設置したり、熱板そのものを曲面にすることで曲面形状の成形物をラミネートすることも可能です。ただしこの場合、成形物の形状が変更になったときには治具や熱板の交換が必要となってしまいます。北川精機では、「治具を使用せずに曲面形状の成形品のラミネートを行いたい」というお客様からの要望に応え、上下ダイヤフラム方式の「曲面ラミネータ装置」を開発しました。

この装置は、上下2枚の柔軟なダイヤフラムシートの間に曲面形状の成形品を挟み減圧することで、成形品の曲面形状を保ったまま(※1)上下から大気圧で圧縮することができます。

さらに、この上下のダイヤフラムシートから少し離れた位置に配置された成形品に熱を伝えるため、熱板とダイヤフラムシートの間をチャンバー構造とし、圧縮空気(~1.6MPa)を導入することで、金型不要の「加圧式曲面ラミネータ装置」を実現しました。

※1)
製品の形状を保持するためには、加圧成形により変形を起こさない材料を含む必要があります。
また、どうしても変形を起こす材料の場合は、変形を起こさない治具を添えて加圧成形することで、製品の形状を保持した加圧成形が可能です。
北川精機独自の工夫で加熱速度を確保
上下ダイヤフラム方式の「曲面ラミネータ装置」開発における最大の技術的な課題は、成形品への加熱速度でした。熱板上に直接成形品をセットする一般的な「ラミネータ装置」では、熱板から成形品下面へ熱伝導で効率的に熱を伝えることができます。一方で上下ダイヤフラムにした場合、ダイヤフラムシートから少し離れた位置に配置された熱板からの熱放射や中間の空気層を介した熱対流といった間接的な加熱となり、成形品を十分な速度で加熱できるかが問題となりました。

その問題を解決するために、熱板とダイヤフラムシート間の距離や、熱板の温度コントロールを最適化し、さらに熱板からダイヤフラムシートへの放射による熱伝達(遠赤外線)効果を高める工夫を施すことで、生産設備として発注いただいたお客様に満足いただける十分な加熱速度を確保することができたのです。
まとめ:加圧式曲面ラミネータ装置の特徴
上下ダイヤフラム方式
  • 曲面(湾曲)を有する製品のラミネートに対応
  • 表面に凹凸のある製品も均一に加圧(製品の形状に沿った加圧成形が可能)
  • 製品の側面も加圧されるため、レジンフロー(溶けた樹脂の流出)も抑制

上下両面加熱
  • 上下熱板から対象に熱が伝わり、上下の温度ムラが少なく均一に加熱される

高真空下(0.2KPa以下)でラミネート
  • 脱気不良(気泡の発生)を抑制

圧縮空気(1~1.5MPa)で加圧
  • 加圧不足、加圧ムラによる成形不良の抑制および成形品の多様化
加圧式曲面ラミネータ装置はこんなところに使われています
  • 曲面状のソーラーパネルやタッチパネル、装飾ガラスなどのラミネート
  • プリント基板・薄膜基板・フレキシブル基板・ICカードなどのラミネート工程、複合材(CFRPなど)の賦形や予備賦形(プリフォーム)
ソーラーパネル
お客様のご要望に合わせた試作協力、最適な装置提案を致します
「曲面状のソーラーパネルを、金型(治具)を使用しないでラミネート成形できないか」という、お客様からの要望によってこの上下ダイヤフラム方式の「曲面ラミネータ装置」は生まれました。加圧工程で圧縮空気をプラスすることで、多様な製品のラミネートや、FRPのプリフォームなどの成形加工にも適用されています。

当社工場に簡易的な「曲面ラミネータ装置」を設置しております。「ひょっとしたら、この方法・この装置を使えば、あの製品が成形可能ではないか⁈」と思い当たるものがありましたら、是非お気軽にお問い合わせください。

可能な限り、お客様のご要望に合った条件での試作評価に協力させていただきます。そして、既存の設備や工程にとらわれず、お客様の製品実現に役立つ新しい成形工程をともに考え、最適な装置をご提案できればと思っております。


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